井上陽水は問いました。

「探しものは何ですか?」

そうしてすぐさま、それが見つけにくいものなのか、
まだまだ探す気はあるのかと
畳みかけるようにこちらに答えを求めます。

しかしそのくせ陽水は
詳しく尋ねておきながら
失くし物のことは忘れ、
踊りを踊れと持ちかけます。

「夢の中へ行ってみたいと思いませんか?」

甘美な言葉で聞く者を誘惑するのです。



……わたしはまだまだ探す気なのだろうか。

今日、部屋で失くし物をした。


棚の、中板。


去年まではそこにあったはずなのだ。

この棚はたしかに五段だった。

いつのまに、一段減っていたのだろう。

まったく思い出せない。

戸棚のなかも、机の裏もみんな探したけれど見つからない。

家中くまなく探してまわった。
おかげで汗だくだ。

それなのに、それなのに
一枚抜けた棚板が、どこにもない……。


そのときだ。


あの歌手の、
日に焼けた笑顔が浮かぶ。



……もうわたしは、陽水の言うことを聞いて
踊りを踊ってしまえばいいんじゃないでしょうか。

夢のなかへ、夢のなかへ
行ってしまえばいいんじゃないでしょうか……。



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