〔書き出し小説 115〕ワイルド・ジャパニーズ



オフィスに野生の日本人が放たれた。


〔書き出し小説 116〕毎朝の顔



肩で息をし、頭をあげた。

どこかで見た顔だ。

必死で脳内を探ると、招かれたホールに集まっていたのは
いつも満員電車で会う
同じ車両に乗り合わせる面々だった。


〔書き出し小説 117〕どうぶつえん



縞模様のくっきりとした猛々しい一頭を指さすと
迷いなく言った。

「これにします」


老齢になった大野勝美は、
捕食される相手にアムール虎を選んだ。


〔書き出し小説 118〕ヒューマン品種改良




3人の男のプロフィールが渡された。

このうちから一人を選び、わたしは子孫を作ることになる。


人間の品種改良のため
ある特定の特徴を持つ男女は
つがいになることが義務付けられた。


〔書き出し小説 119〕特別催物



デパートの屋上で
イエス・キリストのサイン会が行われている。



〔書き出し小説 120〕お二人様用棺



斎藤と水谷は二人で一つの棺に入った。


〔書き出し小説 121〕ゴジラ vs. 大仏



大仏はおもむろに立ち上がると
奈良のまちの上で、ゴジラと向き合った。



〔書き出し小説 122〕パスタ稲荷



稲荷神社が世界に広まった。

各地に本殿が立てられ、
イタリア人はパスタを、
フランス人はパンを、
アイルランド人はじゃがいもを、
それぞれ祀ることになった。


〔書き出し小説 123〕海中大仏



海中大仏を見に行く。

それが我々の新婚旅行であった。


〔書き出し小説 124〕平成徳政令



ローン、奨学金、事業融資……。

すべての借金が一夜にして帳消しにされた。



〔書き出し小説 125〕奉納用の舞い



25日夜中。

庭で夫の舞いがはじまった。

結婚以来、独自に行う
神への奉納物だ。


〔書き出し小説 126〕0120



突如、莫大な寂寥感に襲われた六条たまきは、
0120ではじまる番号に片っ端から電話をかけた。



〔書き出し小説 127〕ペット鳳凰



「大丈夫だよ、絶対に死なないんだ」

クラスメイトの九重くんが家族で温泉旅行に行くあいだ、
九重家が代々飼っているペットの不死鳥を預かることになった。



〔書き出し小説 128〕そらいろ



みどり色の空にはいつしか暗雲がたちこめ、
赤い雪が降りはじめた。



〔書き出し小説 129〕貧民一揆



貧民一揆が起こり、
東京証券取引所が打ち壊しに遭った。


〔書き出し小説 130〕三途の川



シフトが終わるまであと20分。

香奈枝は27歳のフリーター。

三途の川でもぎりの仕事をしている。


〔書き出し小説 131〕鎖国リターンズ



「やっぱ、もう一回やる」

そう言って、日本は鎖国を再開した。


〔書き出し小説 132〕Rising Sun修正案



「どうも納得がいかなくて……」


日の丸のデザイナーが
修正希望を申し出てきた。



〔書き出し小説 133〕急募 皿カウンター



お岩さんが皿を数えるバイトを募集している。


〔書き出し小説 134〕家政婦はまた見た。



津田晴子が家政婦事務所から派遣された家に着くと、
そこは前の夫の家だった。


〔書き出し小説 135〕富士遷移



富士山の移転が決定した。



〔書き出し小説 136〕冷凍人魚



10尾680円の徳用冷凍ししゃもの中に
一人の人魚が混じっていた。


〔書き出し小説 137〕完全週休二日制



太陽が週休二日制になった。



〔書き出し小説 138〕臓器移植とカルタ



留学のためにホームステイしている宇宙人が
臓器移植とカルタのちがいを説明してくれと言う。


〔書き出し小説 139〕孫の手



実家の土地から
大量の孫の手が出土した。


〔書き出し小説 140〕体格変化



1950年から2000年にかけて
日本人の平均身長は10センチ以上も伸び、
逆に平均視力は絶望的に下落した。

そして変化の波はとどまらず、
2050年から2100年にかけて
日本人の平均皮膚の厚みは5倍になり、
平均触力は異様なまでに発達した。


〔書き出し小説 141〕オーダー



社宅の居間でテレビを見ていたら
テニス帰りの四人連れがどやどや入ってきて、
アイスコーヒーを注文した。


〔書き出し小説 142〕チアリーダー



チアリーダーたちが一糸乱れぬ行進で分娩室に入室した。

「私たちこれから、全力であなたの出産を応援します」

キャプテンは白い歯を光らせて笑顔を向けた。


〔書き出し小説 143〕お歯黒講師



その産休講師は
お歯黒をしていた。


〔書き出し小説 144〕血統輸血


身分が低ければ、血を入れればいい。

階級社会につかれたあなたに特効薬。

上流階級の血 200cc 時価


哲子はマンションのポストに
こんなチラシを発見した。


〔書き出し小説 145〕開幕




田所くんが、
幕府を開きたがっている。


〔書き出し小説 146〕サバンナの素




実家から、「サバンナの素」が送られてきた。

これを撒けば
オフィスでも駅のホームでも
たちまちサバンナと化す。


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