《本日のお客さま》 積ん読



年齢:63歳
性別:男性
主な身上:購入したのに読まれないままになっている書物の状態



はい、皆さんこんにちは。

私のことは、ご存知ですかな。

きっとあなたがたのお家にもあるでしょう。

書店で「面白そうだな、読んだら良さそうだな」と思って買ってはみたものの、
なんやかんや他のことに気を取られてしまって
そのまま読まずに置いてある本。

いつのまにか部屋の景色と化してしまったり、
埃をかぶっていたり……。

あイヤイヤ、いいんですよ? いいんですよ?

本なんて気が向いたときに読めばいいんです。

気乗りしないときに読んでもらったって、
私たちもなにも心に残せなかったとなっては
意味がありませんから。


積ん読にも効果があるという話がありますな。

気になる本があっても買わずにおれば、
そこに書いてある内容は自分と切り離されたままだけども
これを実際に手に入れ、自分のものとして部屋に置いておけばそれだけで
内容が身につくというような。

うーん、確かにそうかもしれませんなぁ。

最近の本はカバーや帯を見れば
内容がほぼほぼわかります。

読まずとも、
そこに綴られる知識を身近に感じて親近感が生まれてくれば
まずまずの働きがあるということなのかもしれません。


昔々、外国の貴族の家なんかでは
「我が家には知性があります」と見せようと
壁面を豪華な書籍で埋めていたそうですな。

もうこうなると本も完全にインテリア。

「じゃあその文学全集を2メートル!」って
内装屋に注文するんでしょうかね。


それに比べると私たちなんかは
買われるときには中身を期待されているだけ
マシなのかもしれんなぁ。



「自分はまだ書物なのか」。

書店から買われてきて半年、1年、2年……。

だんだん募ってくるのがこの疑問ですな。

私は情報として見られているのか、
それとももはや物体なのか。



新聞紙ってあるでしょう?

あの世界はシビアですよ。

昨日最新ニュースを載せて現代の情報源と期待されていた新聞が
今日には古新聞ですからね。


政治家の所業を暴いて読み手を激昂させ、
芸術や文化の秘儀を垣間見せては
購読者の心にきらめきをもたらした
ニュースリソースが
一夜明けると
じゃが芋を包まされています。

タンスの中敷をやらされています。

窓の結露を拭かされています。


あれを初めて見たときは正直、唖然としましたねぇ。

あの子たち情報源だったのに……、
すぐさま
保温や保湿、緩衝、埃よけですからね。

黒のインクは消臭効果もあるって言ったって……。

有効活用してくれるのはいいんですけども……。



私ももう書物としてここにいるより
ブックエンドとしての活動の方が長くなりました。


「そろそろ」、かもしれません。


「いよいよ」、かもしれません。


もしかしたら「すでに」なのかもしれません……。




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