《本日のお客さま》 ハリケーン

年齢:28歳
性別:女性
主な用途:大西洋北部、太平洋北東部などに発生する
      熱帯性低気圧。



ハーイ、ハリケーンよ。

お会いできてうれしいわ。調子はどう? 

え、パンプス素敵ですって? まぁありがとう!

ハイヒールとミニスカートはあたしのトレードマークなの。
似合うでしょ?

ハリケーンたるもの、足が細くちゃダメよ。

太くて美脚。これが絶対条件ね。

あたしたちが通ったあとの風景ってのはね、
骨も筋肉もしっかり付いた美しい女が
怒りに任せてあたり構わず蹴散らしたような出来上がりってのが理想なの。

アメリカにも夫婦喧嘩をする家庭があるけど
妻が家中のものを投げて潰して叩き割ったあとの内装を見ると
すがすがしいもの。

基本的にシンパシーを感じるし、時には
「……この女、デキる……!!」って
ライバル心を掻き立てられることさえあるわ。

「去った後にも凄みが残る」、
これがあたしたちハリケーンのアイデンティティってところかしら。

これからもあたしはあたしのやり方で、全米を揺るがすわ。


日本にはタイフーンが来るみたいだけど
あなたたちは彼らを名前じゃなくて番号で呼んでるのね。

台風11号とか。

日本が序列の国だからなの?

これはあたしからの提案なんだけど
あなたたちも名前で呼んであげたらどうかしら。

「台風タケル」とか「台風ツヨシ」、「ハヤト」「ゴウタ」……
う~ん、いい感じ!

あっ。でもあなたたち、
そのうち「台風トメ」とか「台風オサム」とかいう名をつけ始めそうよね。
興ざめだわ。

名前で呼ぶことのメリットはね、
あたしたちと人間との間で対話が生まれるところなの。

それはとってもドラマチック!

アメリカの国民はあたしたちに向かって叫ぶわ。

「お願いだから大人しく帰ってくれシンディ!」
「イザベル、どうか、どうか車だけは勘弁してくれないか!」
「ヴァレリー、僕がすべて悪かった。もう許してほしい」

……燃えるじゃない?


あと訪問前に小耳に入ると
つい張り切っちゃう言葉ってのもあるわね。


「午後にはオフィーリアが来るから
 シャッターを下ろして絶対にいないフリをするんだ!」
「あの壁の傷は去年アーリーンにやられたものさ」
「収穫はすべてフローレンスが持っていったよ」

んもぅ、たまんないでしょ?

こんなこと言われたら、あたし
うんとサービスしちゃう。

アメリカ人ってホント
相手をその気にさせるのが上手だから。

乗せられすぎて失敗したのが2005年のカトリーナね。

彼女は自己顕示欲が大きすぎたのよ。

「私って凄いでしょ」「あんなことも、こんなこともできるのよ」って
あんまりしつこい女はNGよ。
「もっと欲しい」なんて意地汚い。

正しいハリケーンは疾風を引き連れて現れ
掻き回すだけ掻き回し、
同じ勢いを保ったまま潔く立ち去る。

そして自分自身で喧伝することなく、あくまで
背後の光景に威力を語らせるのがポイントね。


じゃあ、また夏に会えるのを楽しみにしてるわね。

お会いできてよかったわ、バーイ!




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